取材こぼれ話 わさびとファッション

 

 

Vol.22で取材したDutch Wasabiさんと、Peter George d’Angelino Tapさん。お二人に会いに行き、ディープなお話が聞けました。そんな取材の裏話をひとつ💛

ワサビ話は淡々と

「日本の何かをやっている」。そう聞くと、日本熱が高いに違いない!入口はどこだったのかしら。旅行? アニメ? 和食? まずそんなところから聞いていこうかな!と質問を想定します。

そして「日本」というマイナー分野だから、自ら切り開いていく姿を浮き彫りにしたいと、取材前の頭は知らず知らずに『情熱大陸』あるいは『プロジェクトX挑戦者たち』モード。

取材に答えてくれたSanderさんは、そんなこちらの想定&期待を見事に裏切ってくれる方でした。ワサビという栽培が難しい植物を育てているのですが、肩の力が抜け、ひょうひょうとされた方だったのです。

グリーンハウスで行われたインタビューは、最初の頃は、サシミやら、自然やら、和食やら、あちこちから日本をひっかけて答えを引き出そうとしましたが、「和食、好きだよー。スシとかね」「いいよね、ジャパン」など、するするーっと滑る答えしか返ってきません。そんなら苦労話だ!と方向を転換し、「苗がほぼ全滅しかかってどうでした?」と聞くと「そりゃ大変さー」。「そんな苦労の末、はじめてまとまった量を収穫できた時はどう感じましたか?」→「うーん…。どうだったかな。もう忘れちゃったw」。

こりゃダメだ。日本Love熱や感動ストーリーは、この人のスタイルではないのだ。悪あがきはやめ、Sanderさんのフローにのることにしました。そうすると、比較的安定しつつあるワサビ栽培ですが、今でもたゆまず研究していること、力を入れているオンラインショップでは、一般的な商品は入れたくない、とこだわってセレクトしていることなど、Sanderさん特有の静かな情熱が伝わってきたのでした。

取材も終盤の頃、IT業界から農業へとスイッチした理由を聞いていたところ、ポツっと「父親が盆栽作りに入れ込んでてね、教えていたこともあったから、植物を育てることが身近だったのかなぁ」。

あるじゃん!日本つながり!!

「じゃあ、お父さんのそんな姿から、気づかないうちに日本が身近だったと言えるかもしれないですね!」と多少強引に質問すると、Sanderさん、日本絡めての回答を得たい意図に気づいたのか、クスりと笑って「うーん、父の盆栽と僕のワサビ栽培をつなげるのは、ちょっと無理があるかなぁ。無意識につながってる……。うーん、どうだろう」。

教訓:取材は思い入れは大切ですが、思い込みはいけません、ハイ。

ファッション話は深く

日本語でオランダのブランドだけを紹介している雑誌はない!とmooi-mooiで密かに力を入れているDutch Brand Story。今回は、ひょんなことからオートクチュールデザイナーを取材できることになりました。

オートクチュールは、ブランドというよりもはやアート。テレビ東京の番組、大内順子さんの『ファッション通信』は熱心に見ていましたが(歳がばれる💦)、オートクチュールの知識が自分に十分にあるとは思えず、果たして取材できるだろうか?と不安を感じつつ、今まで取材したオランダ人はどの人も気さくでオープンだったことから、胸を借りて(勝手に)挑むしかないと、ハーグにあるペーター ショーシさんのアトリエを訪問しました。

予想通り、ペーター ショーシさんはとても気さくでオープンな方で、たくさんお話をしてくれました。が! でてくるでてくる専門用語&ファッション業界の著名人。ディカプリオが日本でしか通じない発音の反対バージョンで、ペーター ショーシさんが教えてくれる著名人のカタカナ読みがわからない💦。しかもフランス人。綴りも想像できず。「今、言った方の綴りを教えてください」という素人まるだしの質問はあんまりなので、想像で思いつく綴りを殴り書きし、ペーター ショーシさんの口から発せられた発音をできるだけ忠実にカタカナ化して書きとめます。つまり、冷静にお話を聞く体を装いながら、実は背中に汗をかきまくりだったのです。

記事には書ききれませんでしたが、ファッションと社会問題にも話が及びました。特にファッション業界のリサイクルは大きな社会問題になっています。ファストファッションの台頭で、化繊のみ、あるいは化繊を混合した生地でも、ほとんどがリサイクル不可だそうです。ペーター ショーシさんが数年がかりで織っているタペストリーでもできればリサイクルされた生地を使いたいそうですが、非常に難しいそうです。洋服に使う生地は、CO2排出削減と同じくらい取り組まなければならない大きな課題なのです。

記事にも書きましたが、ペーター ショーシさんのデザインは奇抜なのですが、感動ポイントはそこになく、とにかく美しいのです。そして、その人、その場、その舞台がもつ雰囲気を最大限に引き出す力があります。それは、毎日を慌ただしく過ごすのではなく、その足をとめて周りをゆっくりと見てみると、野に咲く花がそれ自体が美しいだけではなく、辺りを明るくする力があることに気づくことに似ているかもしれません。

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